アラカルト編(その3)
2024年12月27日 | 工房日記 | Comment(0)
2024/12/27
この2週間にわたってアラカルト編で取り上げた組子お盆の修理が完了しました。完了報告の前にこのお盆の生い立ち・いきさつを推察してみました。
型式は半月盆が2対の組子式になっています。それが4組、8枚でした。作られた時代は昭和の初期か?指物師工芸が全盛の時代の物と思われます。材質は定かではありませんが檜ではないかと思われます。理由は柔らかい材で結構柔軟性があるので、、。それと漆と相性がいいし。それが伺えるのは、立ち上がりの縁板です。幅15mm厚さ4mmの板がグルリと取り巻いていて、曲げの部分は切れ込みを入れて曲げてありますし、合わせ部分は薄くそいで繋いでいます。底板との接合は目釘です。底板は厚さ6mm。一枚物ではなくてわざわざ2枚合わせとなっています。
これは反り防止なのですが、現代では接着剤で済むところを、2か所に繋ぎを入れてあります。
仕上がりは拭き漆式ではありません。生漆を塗りっぱなしで乾燥させる方法です。たぶん漆塗り作業はプロではなく、指物師さんがご自分でやられたのではないかと思われます。
通常、生漆を塗り立てる場合は漆刷毛を使ってゆっくりと均一に塗布するのですが、この作品の仕上がりには、刷毛が一般の物で動きに緩急がハッキリする所が多々あって、特にエンディングの部分は荒っぽく引き上げています。その刷毛跡が景色になっている効果はありますが均一性がありません。
今回の修復は、縁板が浮いている部分の接合・傷跡を消すこと・全体に生漆の拭き漆を施しました。残念ながら使われ方が少々荒っぽかったところ、例えば熱い湯のみを置き、表層が変色した部分はお化粧直しをしても隠せませんでした。
最終の上塗り作業の画像と仕上がり状況をアップします。