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13.イロカノ語

2012年09月14日 | コラム, 工房日記 | Comment(0)

13.イロカノ語

 

 巻頭言 : 最初にお断りしておきますが、今回のテーマも長くて、”くどい”!です。^^;

このコラムの時系列性や登場人物・ロケーション等々は前篇の流れを引き継いでいるし、前篇の出来事はそのまた前篇に起因しています。

てなわけで、途中からご覧の方は、最初から読んでいただくとスッキリします。^^/

 

 バギオ滞在も5日目となった。身も心もいわゆるこちらの気候風土に慣れてきたようです。

朝4時のニワトリの起床ラッパにも飛び起きることもなくなり、宿を出てから、タクシーの捕かまえ方、行き先の告げ方、お金の払い方、車中でのTEXTのやり取り、スコールに出会った時の対処の仕方等々。それに、なぜか口に合うようになった甘めのスープご飯・・、水を得た魚のように初めての街をスイスイと泳ぎ回れるようになった。

 

この日(6/02)は、Baguio Museum → Pugo村へ木工品探し → キャンプ7へ戻って漆塗り教室の予定であった。M子さんとは午前10時にBaguio Museumの前で待ち合わせ。M子さんはその日の朝早くからゼミの先生と提出レポートのことで面談が入っていて、うまくいったのかいかなかったのか少し遅れることに・・・。その間ひとりで館内を見て回る。

 

主な展示物は地方部族の木造りのステイタス像や木工品および生活習慣を写真で紹介している。そして当然、スペイン・アメリカ・日本に統治や占領されていた時代の記録が時系列に展示してある。1940年~1945年にかけての日本軍の占領時代の記録もあり、それらを見るに至っては忸怩たる気持ちにな る。本題から少し離れるが、その時代に少しふれる。

 

1944年1月、日本軍第14フィリピン方面軍は司令部をマニラからバギオに移動した。司令官はマレーの虎で恐れられていた山下奉文であった。フィリッピンは石油が出るわけでもない、ましてや軍事上の重要拠点とは思えないバギオに司令部を置いたのは何故だろうか?

 

資料によると、その時の第14方面軍の兵力は約22万人。狙いは日本本土決戦を引き延ばすための「持久拘束戦」と称するアメリカ軍のルソン島釘づけ作戦であった。

実態はすでにアメリカ軍に追い詰められて、後退しながら自然の要塞に最後の陣を敷いたのである。約半年間、食料や弾薬の補給もない悲惨な戦闘が繰り広げられている。バギオも空襲を受け壊滅状態となった。司令部はその後イフガオ州のカガ ヤン渓谷に移動してそこで終戦を迎えた。その間、戦争の名のもとに多くの民間人が被害を受け、また地方部族の食料を略奪したり、狭い耕地を焼き払うなどの行為が、その後の裁判で戦争犯罪を問われることとなる。

 

この戦争は日本とアメリカがフィリピンを舞台として行った戦争であり、戦後フィリピン人が、日本は「破壊」をもたらすためにフィリピンへやってきた!と考えたのも無理からぬことである。記録によると、フィリピン戦での日本軍戦死者は46万人。その2倍の民間人が戦禍に巻き込まれている。

 

最近ではその歴史も色あせてしまったが、イフガオ出身のEmileeさんの親戚・ご家族の中にはそ の当時のことを記憶から消せない人たちもいるそうである。その地方の人たちとおしゃべりをする時は気構えをしっかり持っていないといけないとのこと。 M子さんが語ってくれた。

 

さて、このコラムの本題はフィリピンの言語についてでしたね ^^;。

 

フィリピンの主要言語は今や英語。これは1900年の初頭から始まったアメリカによる統治が残した良い結果の一部である。

 

話はまたまた飛ぶが、Costco JAPANのこと。 日本にも10店舗以上のお店を広げたアメリカ資本のホールセール会社である。ここのお客様は在日外国人が多いことから英語の話せる人を優先して採用する。特に、デリやベーカリー等のフレッシュ部門・デモンストレーション販売・レジ 部門には多くの在日フィリピン人が活躍していて、全員が流暢な英語を話す。

 

だが、この人たちがブレイクルームにいるときは仲間同士でわぁわぁワァワァ限りないおしゃべりをする。使っている言葉はタガログ語、これがまた大変騒々しいのです。(私の体験談)

タガログ語はフィリピンの標準語である。特徴は、抑揚が高くて、早くて、忙しい。結局はおしゃべり自体が騒々しくなる。その他にフィリピンの地方言語としてセブアノ語とイロカノ語があって、ここではイロカノ語について記述する。

 

まずは文献から。イロカノ語は、ルソン島北部の国語として位置づけられていて、その特徴であるイントネーションはおっとりとした優雅さを持っている。

 

例をあげると “Naimbag a bigatyo” カタカナの発音は「ナインバッグ ア ビガットヨ」ですが、バとガを強く発音してそのあとの子音には母音をつけない。また、話し言葉では、真ん中の a は鼻にかける音、すなわち鼻濁音で “nga” と発音する。TVのサザエさんの最後の部分で、サザエさんが「来週もまた見てくださいね~」と言った後で食べ物をのどに詰まらせ、「ンガ・ン・ン」とした ときの発音に近い。

 

さて、“Naimbag a bigatyo”ですが、“naimbag”は「良い」、“bigat”は「朝」の意味で、“a”は前後の修飾語。最後の“yo”は相手が複数のときの言葉。つまり、“Good morning!” 「おはよう」の意味でした。

 

このように、抑揚が上がり下がり~~して、語尾が柔らかく上がる。すべてが疑問文のようでいてそうではなく、その受け答えも茨城弁のように(ゴメンナサイ)しり上がりで終わる。 会話の途中でトーンが下がる৲ のような節はない。 この~~ のイントネーションがおしゃべりを円やかにして延々とおしゃべりが続くことになる。

 

このイロカノ語、スープご飯と相性がいい。スープご飯をより美味しくさせる脇役、と言うよりか主役かもしれない。M子さんは以前JOCV(青年海外協力隊) としてルソン島北部に2年間滞在し2009年にバギオへやってきて現在3年。生活の中で覚えたイロカノ語を流暢に操る。

地元のおばさんたちの話に溶け込んで、長~いことおしゃべりしているうちに、いつの間にか答えを引き出している。このテクニックに何度もお世話になり、助けていただきました。m(_ _)m

 

そうそうこの日は、Pugo村への木工品の買い出しに続いて、拭き漆のWork Shopの開催となりますが、Pugo村のくだりは別項で紹介することとします。

 

『前日、私が塗って乾かしている作品の入っている段ボールの箱が何か変!!』

箱をそっと開けてみると、割りばしの上に載せて置いてあったはずの作品があっちを向いたりこっちを向いたりしている。子供たちがその周りで遊んだのかもしれない。でも特に傷が付いている訳でもなく大丈夫であった。

 

拭き漆体験教室の始まりです。木地固めで出てきた表面の立ち(ざらざら)をまたまた#400のサンドペーパーで優しく削り取って漆塗りを始める。私は手を出さずに口を出しただけ。生徒さんはEmileeさん、M子さん、木工所の若者の3人。

皆さん真剣そのもの。真剣な訳は自分たちの知識の範囲が広がっていく楽しみと、新しい商品のアイテムとして取り入れることができるかどうか?との興味からか? M子さんに至っては、フィリピンでは初めて漆を塗る日本人女性のイメージを確立したいようである。

 

前日の私の様子を見ていたので慎重に大胆に作業を進めていく。細かい説明はやめて自由に塗ってもらった。ただ、素肌に漆をつけないように声をかける。

 

木地固めした素材に生漆を塗ると、みるみるうちに漆が吸い込まれて深みと色艶が増していきその変化が目の前で分かる。そしてせっかく塗った漆を拭き 取ることに・・。そのとき若者から、「この状態で乾かせば見た通りの仕上がりになるのでは? 何度も塗らなくても良いのでは?」との質問が出た。そう、この木工所での仕上がりはサンデイングシーラーとウレタン塗装の2回だけ。

 

若者の質問への答えはNOなのです。まず、 理由の一つ目、このまま乾かすと「安っぽいテカリ」が出てしまうこと。二つ目、見た目には均一に塗れていても「漆幕の厚みが一定ではなく濃淡が出てしま う」こと。三つ目、手で持っているところをどうやって塗るのですか? 最後に乾燥室に移すとき、「持っている場所に指の跡が残る」こと。このことで「ダ メ」なんです。

拭き漆は、木地が吸い込んだ分だけの漆を残して均一に拭き取ることを何回も繰り返し、深みと色艶を増していかなければならないのです。

 

M子さんに例の調子(イロカノ語の~~ )で優しくそして丁寧に説明してもらい了解する。 でも、その若者の顔には疲れの色がどっと出てきたりして・・・・・^^;。

後始末は私がかってでて、作品を静かに段ボールの箱に入れて終了。この日はEmileeさんのご主人、SantosがCHAYAまで送ってくれました。

 

(イロカノ語編 The End)

 

 

P.S.  その車中での話。Santosは7月~9月にかけて新潟県に来ると言う。後で調べたら、新潟県十日町を中心とした「越後妻有・大地の芸術祭の里」へ参加 するイベント団の一員として来日することが分かった。3年前にも同じイベントに映画監督キドラット・タヒミック氏が、戦後のラブレター(イフガオの棚田か ら新潟の棚田へ、愛をこめて)を出展している。興味のある方はネットで検索してください。また、工房日記にもショート・コラムしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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